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ジンジャーエールを求めて

2010.03.22 - 日常
金曜日の夜の事である、寒風吹きすさぶ中、旧知の友である山椒君の自宅に遊びに行った。
そこで目にしたリキュール、アマレット。
なんでもティラミスを作るために購入したらしい。
共通の知人であり、バーの経営者である人物にアマレットを使った美味しいカクテルをメールにて教えてもらうことになった。
そこで教えてもらったカクテルがアマレットジンジャーだ。
最低限必要なものはアマレットとジンジャーエール。
早速近くのスーパーにジンジャーエールを買いに走るも、なんとまさか、ジンジャーエールが置いていないのである。
店員に聞いてみるも、取り扱っておらぬとのこと。
しようがなく近場の自販機を全部回るも、ジンジャーエールの発見には至らなかった。



翌日は州知事らとカラオケ⇒飲み会と散々騒いだ後、改めてジンジャーエールを探す旅に出かけることとなった。
とは言うのものの、この時点は二人とも極めて楽観的であり
「帰りにジンジャーエール買っていこーぜ。」
くらいの気持ちであった。
まずは山椒君の自宅から2kmほど離れた駅で23時前に降車し、帰り道にあるコンビニ、自販機を回ることに。
途中にあるショッピングモールは残念ながら23時で閉店していた。
ローソン、サークルK、と回るもどこも置いていなかった。
結局ジンジャーエールを見つけられぬまま山椒君宅へ帰りついた。
既に日付は替わっていた、なんということか、直線距離で2kmの道程を回り道を重ね、1時間強も探しながら歩いていたのだ。
若干の疲れを感じていた我々だがこの時も"まだ"楽観的であったのだろう。
車でジンジャーエールを買いに行くことになった。
二人とも飲み会で飲酒をしていなかったことが、それを決定付けた。



少し離れたところにあるもうひとつのサークルKへ車で向かう。
ここはジンジャーエールが置いてあるという山椒君の確かな記憶を頼りに向かったのだが、置いていなかった。
サークルKは商品入れ替えたのかも、とまた少し離れたセブンイレブンに向かったが、そこにも置いていなかった。
我々は未知の恐怖に包まれた。
考えて欲しい。ジンジャーエールである。
おそらくはコーラの次にメジャーな炭酸飲料である。
既に4店舗のコンビニ、昨晩はスーパー、と回って、その存在が確認できていないのである。
恐慌状態になった我々は名古屋市内から脱出し、瀬戸方面に車を走らせた。
山椒君はメールで彼女にジンジャーエールの存在の有無を確認している。
分からないでもない、当たり前が当たり前でなくなっているこの感覚。
瀬戸方面に向かう途中にあるコンビニには全て寄った。
だが、ドリンクコーナーを確認するもどこにも無い。
コンビニの駐車場に車を止めるたびにお互いを奮起し、ジンジャーエールがあることを強く願いながら入店し、虚ろな表情で店を出た。
自販機を見つけるたびに鳥類並に首と眼球を激しく動かし、凝視するもジンジャーエールの姿は無い。
まさか、カナダドライにに何かあったのかも知れない、とネットニュースを確認するも特に無し。
途中、ファミリーマートを見つけた。
ファミリーマートならきっと・・・・・・!
だが願いはむなしく崩れ去った。
その後も、デイリーヤマザキを見つけて、狂喜、そして失望。
ココストアを見つけて、狂喜、そして失望。
ミニストップを見つけ見つけて、狂喜、そして失望。
いや、デイリーヤマザキではソフトドリンクコーナーにてGINGERの文字は見つけた。
だがそれは伊藤園の和風ジンジャーエールという謎の代物だった。
体から力が抜けるという感覚はこういうものかと実感した。
最後に行ったコンビニはローソンだったろうか、その時点で既に30店舗近くのコンビニを回っていた。
お互い声には出さずとも諦めの空気が流れていた。
瀬戸方面から戻る途中では幾つかのコンビニは立ち寄らなかった。
疲れていたのだ、時間は午前2時すでに捜索を始めてから3時間が経過していた。
プレミアがついているものであったり、とびきりの人気商品だというなら分かる。
3時間探して見つからなくても、当然かもしれない。
だが、我々が探しているのはただのジンジャーエールである。
ウィルキンソンである必要もない、カナダドライでいいのに。
車内に漏れる悲痛とも取れるうめき声。

なぜだ・・・・・・
なんで無いんだ・・・・・・
俺たちは・・・・・・ジンジャーエールが飲みたいだけなのに・・・・・・

いやそもそも、もうジンジャーエールが飲みたいわけではなかったのかもしれない。
ジンジャーエールの存在を確認したかった。
自分達が今まで飲んできたのはなんだったのか、ジンジャーエールはここまでしても手に入らないものだのか。
根本的な認識を覆される恐怖。
この世からジンジャーエールが無くなったのではないかという、恐ろしい妄想を払拭したかった。



諦めたまま終わりたくは無かった。
僅かでも希望がある以上、諦めという軟着陸に我々の理性でもなく、神の教えでもなく、魂が。
魂が、諦めの魔の手から我々の精神を解き放ったのだ。
車のハンドルを切り、国道41号に向かった。
国道41号沿い、15kmほど北に24時間営業のスーパーがある。
そこは昨晩行った店舗と同じチェーン店だが、そこはわりと大型の店舗であるので最後の望みに賭けて、深夜の国道41号を走った。
あの時我々はどんな表情をしていただろうか。
高揚感のあまりににやけていただろうか、それとも苦悶の表情だっただろうか、それとも無表情だったかもしれない。
どんな表情であったもとしても、その心は確かに澄み切っていた。
コンビニを回っていたときとは明らかに違う精神状態。
それは自分の選択を貫き誇りに満ちた、魂の共鳴を感じた男達の姿だった。



午前3時、駐車場に着くと我々は粛々とドリンクコーナーに向かった。
無かったら無かったまでよ、と誰とも無く行った。





それは"あった"。





ドリンクコーナーに、悠然と"存在"していた。
カナダドライとジンジャーエールのアルファベット表記。
紛れも無い、見慣れたジンジャーエールだった。
1.5リットル入りも500ミリリットル入りもあった。
こんなに喜んだことがあっただろうか。
勝った、我々は勝った。
この1.5リットル185円の炭酸飲料が、自らの戦いを肯定してくれたのだ。
探索開始から4時間、山椒君宅から15km離れた場所で、我々の悲願が達成されたのだ。



午前4時までに山椒君宅に帰り着き、飲んだアマレットジンジャーはとても甘く、我々の疲れを癒してくれた。
何にも代えがたき、最高の美酒だった。
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